短文


青黄


「しにそう」
「あ?」

ねえ聞いて青峰っち俺死にそうなんすよ。
幸せすぎて近くにいすぎて、死にそう。
君はなんともない顔で隣に座るけど俺にはなんともないことじゃなくてさ。
なんともない風に手に触れたり、頭を撫でたるするけれど。
俺にはなんともないことじゃなかったんだ。

涙がでそうになる。宙を見上げて流れるのを我慢したのは君がそこにいたからなんだ。



ヒソクロ


「お腹いっぱいだ」
「まだ用意もしてないんだけど」
「じゃあいらない」

すい、合わされていた目が離された。
貴方から、私から。

「出ていくの」
止まった手が目立つ。
動いた目がまた僕を見る。
「でていってほしい」
「どちらでも」
疑問符がつかない彼の疑問文。
嘘を付くときの癖の丁寧語。

知らないことは無いみたいなのに、知らないことばかりのぼくら。
いつ、どちらが

「「ねえ」」
話し出すのかとか。
わからないね。

わからないよ。

言ったらすっきりするの。
馬鹿だからわかんないよ。わかりたくないよ。

「…なに」
「オロナインちょうだい」
「……ん、」
机に置いてあるそれをとって渡す。いつもみたいに当たり前に受け取る君を見る。
外らされた目がなんだか嫌だ。


ヒソクロ


ちょっと、あったんだ嫌悪感。
ちょっと嫌いだったんだお前の貴方が一番ですって言う言葉。
お前の自己中心的で的を射てるようで違う言葉も。言葉的に。
結果論としてはまあ、嫌いなんだ。お前が。ぶっ飛ばしたいくらいには。
俺にとっては割っていくべき風船みたいな(好き)の言葉を軽々しく並べるところとか。
重くて、重くてしかたがない!、ところとかね。
ずっととか絶対とかそんな確証がない言葉など信じられるはずも無くて。
バカみたいに信じたようにその言葉を吐き出すお前が仕方なくきらいだったのだ。
いつかその言葉の無意味さに気づくだろうお前の笑顔を壊したくなって仕方がなかった。



貞カヲル


はいちゅう、もらった!
 あまい、酸っぱい、柔らかい、ガムみたい、だけど口のなかで溶けてく感じ

 シンジくんから、もらった。
 最後のひとつ、アスカと、綾波と僕に。
 嫌いで友達じゃない僕にくれた最後のひとつ。
 珍しいからみてたら、くれた。
 あまい。
 ありがとうって言ったら初めての笑顔をみれた。
 初めての言葉、少し暖かいなあ。
 彼はどんな気持ちだったろう。
 笑顔をくれたから嫌な気持ちにはさせてないだろうな、たぶん。
 彼に言われたらどんな気持ちなのかな。