いりあと

てにぷりの入江+跡部/文


「おはよう」
「…おはよう」

真暗闇が差し込む寒い日。
きんと冷えた空気。いつもと変わらぬ日のはずなのに
静かに舞い上がる心がうらめしかった。
はーっ、と入江が息を柔らかく吐いてみると白い空気が見える。
「すごいね、真っ白だ」
「そうだな」
なんとなく、世界が明るく見えたのは窓の外に広がる銀世界のせいだったのかもしれない。
言葉を交わし合うこともせず無言の中白いそれに降り立った。
今日は楽しい楽しいクリスマスでも、正月でも、なんのイベントでもない。
二人の子供が白い世界に惹かれて、さまよいでてきただけだった。

「ねえ、寒いね」
「雪だからな」
「夢ないなあ」

ただ、ただ白い日だった。